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2011年09月09日

共同体企業紹介:株式会社ナチュラルアート・・・農から始まる日本の再生

共同体企業の紹介シリーズです。今回は、農業を通して行き詰った社会の再生を目指している、株式会社ナチュラルアートさんをクローズアップしたいと思います。

ところで、私たちは、

『農』は行き詰った社会を再生する全ての可能性を秘めている

と考えています。誰にとっても必要不可欠な食料を生み出す農業は重要な社会基盤であり、食料をアメリカに一極依存している現在の状況を突破するためにも、日本人にとって「農の再生」は極めて重要な課題です。

また、近年増えてきた「顔の見える農業への脱皮」「就農する若者の増加」「高齢者の役割の再生」「農の持つ教育機能の見直し」などの取り組みは、農を農産物の栽培・収穫に留めるだけではない、農を介した新しい社会システムの萌芽と見ることもできるでしょう。

そのような『農業』において、新しい取り組みを次々に実現しているのが、株式会社ナチュラルアートさんです。

株式会社ナチュラルアート 代表取締役  鈴木 誠

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2003年、株式会社ナチュラルアートを設立。代表取締役に就任した。農畜産物の生産・加工および販売。農業コンサルティング(再生事業、マーケティング、ファイナンス)を事業内容とし、設立から5年半で、年商170億円の企業体に成長させた。

当社の理念に共感いただけた40軒の農業法人や農家と提携し、共につくり、売ることからスタートしたのです。当社が一番力を入れていること。それは「畑を増やすこと」にほかなりません。創業当初から5年半が経った今、直営農場10カ所でイチゴやメロンをつくり、牛や豚を育て、全国を休みなく歩き回って協力を取りつけた提携農家は1000軒を超えています。

今も拡大中のナチュラルアートさんですが、たった5年間で、1000軒の提携農家をどうやって集めたのでしょうか?また、ナチュラルアートさんの、どんなお話に農家の方々は引き付けられたのでしょうか?

現在のような経済停滞期の中で、このような成長を遂げるには、新しい時代を切り拓く何かがあるはずです。それを探していきたいと思います。

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今回紹介する『ナチュラルアート』さんの企業理念に、経営者が激動期をどう見据え、どのような企業経営を行っていくのかの深い洞察と、新しい時代を切り拓く何かがあると感じました。

経営理念

100年続く会社を目指す 100年社会に貢献する

100年社会から求められる会社になる

新しい産業としての農業の構築

過去の延長ではなく、新しい農業

農業を通して、世界の食料事情の健全な発展に貢献し、かつ社会に広く貢献する

☆☆☆市場主義を超えて、共同体企業の可能性に経営の舵を切る

この、企業理念に見る新しい可能性の第1番目は、『100年続く会社を目指す 100年社会に貢献する』『100年社会から求められる会社になる』の中にある、西洋発の市場主義を超えて、共同体企業の可能性に経営の舵を切るという視点ではないかと感じました。

というのは、社会のために長く存続し続けること自体が企業の目的になっているのは、日本人の共同体的企業観そのものだからです。

もう少し詳しく触れると、日本は群を抜く長寿企業大国で、近代市場社会200年より遥か以前からの企業も多くあります。これは、企業集団同士が生産を分かち合って担い続けることで当時の共同体社会を存続させていたからです。また、企業集団は構成員の生産と生活の基盤でもあり、それを守っていくことも経営者の重要な役割でした。

このように、

『社会のために長く存続し続け、構成員の充足を守ること』

それが、日本人の共同体的企業観と言っても良いでしょう。

それに対して西洋では、企業は長続きせず、その代わりに、膨大な遺産の相続人である貴族の家系は極めて長く続いています。彼らにとって企業は、投下した資本を増加させる機械に過ぎません。だから、儲からなければ投資を引き上げ、企業をつぶし乗り換えてきました。そのため長寿企業はほとんどありません。

この違いが『社会の役に立つため会社は存続し続けること自体に意味がある。』『会社は社長も含めた社員みんなのもの』という日本人の共同体的企業観と、『会社は資本家のもので雇用者は機械と同じ道具である』という西洋的企業観の違いを生じさせました。そして現在、株式会社などの西洋的企業観による法体系は、日本人の深い想いを汲み取れずにいます。

そして今、この市場社会の崩壊を前に、日本人の共同体的企業観が再び重要性を増しつつあるのだと思います。そこに、

この仕事は金儲けでもビジネスゲームでもない。農業再生、日本再生のためにやっているんだって。苦労の連続であっても、自主的にこの事業をやめることは許されないのです。上場も視野に入りましたが、それはより長く成長し続けるための通過点。100年続く会社を目指す。100年社会に貢献する。逃げ道をつくらないために打ち立てた当社の企業理念です。

のように、『100年続く会社を目指す 100年社会に貢献する』『100年社会から求められる会社になる』という企業理念を揚げ、社会に貢献する共同体企業という新しい可能性に、経営の舵を切るという決断をしたのだと感じました。

☆☆☆農業に関わる人々の充足を取り戻す価格交渉権の獲得

次に、企業理念に見る新しい可能性の第2番目は、『新しい産業としての農業の構築』『過去の延長ではなく、新しい農業』『農業を通して、世界の食料事情の健全な発展に貢献し、かつ社会に広く貢献する』の中にある、農業という大切な仕事をする人の充足を取り戻すための価格交渉権の獲得という戦略ではないかと思います。

いくら農作業が好きであっても、作物の評価が低いとやる気なんて出ませんよね。ずっとそんな状況が続いていたから、農家の人々も見下されていると感じ、負け犬根性に陥ってしまっていた。でも、流通と同じ土俵で交渉できる仕組みがありさえすれば、農家の人々の収入も尊厳も戻ってくる。これからも全国でそんな活動を積極的に行っていきます。

食料安保のために当社ができること。まずは、たくさんの仲間と一緒に畑を増やすこと。そして価格交渉権を持った持続可能な新しい農業の仕組みを構築すること。この両輪を主軸とし、日夜奔走しているというわけです。

このように、農家の人々のおいしい農産物を誰かに喜んで食べてもらいたいという期待は、低収入という壁に阻まれ実現できず、経済的にも仕事の評価という面でも、不十分な状態にありました。

このような状況の中、ナチュラルアートさんは、大切な仕事をする人の充足が無いこの現状を何とかしたい。そんな社会を何とかしたいという思いから、理念を共感できた農業法人や農家と提携し、共につくり、売ることからスタートしました。農業生産が元気になるという目的の達成のためならば、できることは何でもやるという基本スタンスです。そのために、

1000軒を超える農家の方々が協力してくれたおかげで、たとえばこんなことが起こっています。山口県のイチゴ農家の話です。それまでは、100円の原価をかけてつくったイチゴでも、流通側から80円でしか買わないといわれたら、泣く泣く売らざるを得ませんでした。でも今、ある品目のイチゴを共同でつくることで、県内では一番大きな出荷シェアを獲得するまでになっています。朝穫りイチゴを仕入れたい流通側は、当社に頼むしかルートがなくなった。そうなって初めて、農家側に価格交渉権が生まれるというわけです。

ドリームゲートより

このように、一つ一つは小さな農家でも、組織化していくことで価格交渉を有利にして利益を上げやすくします。そうすれば、農家の人々のおいしい農産物を誰かに喜んで食べてもらいたいという素朴な活動が、一定の収入を伴った評価という形で戻ってくるのです。これで農家の方々の活力も尊厳も回復していくのです。

☆☆☆企業ネットワークを支える共同体的分配システム

価格交渉権を獲得するということだけから見れば、穀物メジャー等も良く似たことをやっています。彼らにとって、農家は買い叩く対象でしかありません。安く買い叩き、流通を抑え、有利な時期に販売し利益を上げるだけで、ここであげられた利益は農家に還元されることはありません。

その結果、農家は金儲のためだけに農業を営むしかなくなるのです。そこでは、おいしく食べていただくとか、安全な食物を提供するということよりも、買い叩かれても利益を出さなければならないという圧力が先にくるのです。

それに対して、ナチュラルアートさんも価格交渉権を獲得していますが、それは提携農家の代表として価格交渉を行っている点で穀物メジャーのそれとは大きく異なるのです。そこであげられた利益は、ナチュラルアートさんを含む提携農家の共同体ネットワーク企業群の中で分配されていきます。

そうすると、提携農家も含めた企業群の経営基盤の安定、活力と生産性の向上が達成されることになります。つまり、価格交渉権の獲得と共同体的分配システムの両輪で企業ネットワークは成立するのです。これが連鎖していけば、最終的には、社会問題である日本の食糧自給率をも改善して行くことになります。

☆☆☆共同体企業のネットワークという新しさ

農家の方々のネットワーク化を通して、共に働く仲間たちの活力を上げていくという戦略に可能性を感じます。提携農家の方々も、仲間として一緒に足元から農業を変えていこう、というナチュラルアートさんの思いに共感して集まったのではないかと思っています。このとき農家の方々に話された言葉をぜひお聞きしてみたいとも思います。

また、そのネットワーク企業の中には、農業実務だけでなく、農業ビジネススクールや経営コンサルなど、農業を支援するさまざまな企業群が含まれています。『農』は行き詰った社会を再生する全ての可能性を秘めている、という事実からみても、これらの取り組みは今後の日本の社会を足元から変えていく大きな可能性を感じます。

このような、可能性に満ちた企業には、この先の新しい課題である、

『社会を足元から変えていく、企業の共同体化とそのネットワークの構築』

という、農業の枠を超えて他業種と結びつく企業のネットワーク化へと、みんなの期待が集まってくるのではないでしょうか

 

コメント

個人を重要視しすぎるのも良くないですよね!

  • ハーバードナンパスクール佐藤エイチ
  • 2012年3月17日 16:10

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